【生化学実験】 2人の仲を切り裂く第3者が使う手は何?
生化学実験担当者の小嶋です。学生の皆さんには、酵素の実験を3週に渡って行っていただきましたが、特に第3週目に行った実験を紹介いたしましょう。
酵素には、基質特異性という、ある特定の基質のみと結合して化学反応を起こさせるという性質があります。すなわち、ある酵素とある基質は、程度の差はあるものの、好きあっているとたとえることができるでしょう。このような「好きあっている者」の仲を邪魔する悪い人が時々いるように、化学物質の世界でも悪い奴(時には救世主)が存在するのです。今回の実験では、「好きあっている者」をアルカリホスファターゼ(酵素)とp-ニトロフェニルリン酸(基質)と仮定し、この2人の中を邪魔する悪い奴(阻害剤とよぶ)はL-フェニルアラニンということで進めました。
一般的に、酵素と基質の仲を邪魔(可逆的に阻害)するやり方には、大きく分けて3つあります。それは、①競合阻害と競合ではない阻害の②非競合阻害と③不競合阻害です。人間の場合で例えると、①は男女のカップルが手をつなごうとしているところに別の男子が割って入る(女子の片手だけを似たような顔つきの男子が奪い合う)ような場合、②は右手で手をつなごうとしている女子の反対の手(左手)を別の男子がいきなり握っちゃうような場合、③はすでに手をつないでいる男女カップルに、別の男子がいきなり女子の手を握ったり2人に抱きついちゃったりするような場合です(ちょっと無理があるかな?)。
さて、実験手順の説明をしましょう。酵素反応は、すべて96穴マイクロプレート上で行うので、マイクロピペットの操作が上手(正確)でないと、実験は上手く行きません。
ブランク測定用・阻害剤なしでの酵素反応、阻害剤ありでの酵素反応を行えるように、次のスライドを参考に実験を開始します。
・96穴マイクロプレートに、マイクロピペットを使って、慎重に試薬等を入れていきます。
・学生の真剣な様子がよく分かります。
・酵素反応を行ったあとは、こんな感じです。
・人間の目では判断しづらい色の濃さ(反応生成物の濃度)をマイクロプレートリーダーで測定します。
・この測定結果を基に、Lineweaver–Burk plotを描いてみます。
※残念ながら、きれいで正しい図を描けたグループはほとんどありませんでした。図のどこかが間違っていたり、抜けていたりします。下図は、その例です。
※例えば、縦軸や横軸の目盛がなかったり、値が変だったりと、・・・・・・でも、徐々に実験がうまくなっていくことを期待しています。
【なぞの答えは?】
2人の仲を切り裂く第3者が使う手は何?・・・という問いかけが最初にありましたが、上の図から推測すると、①の競合阻害ということになるのですが、・・・果たして正しい答えなのでしょうか?
実験では、自分たちが実験で得た結果をもとに考察を行うことが大事です。そのまま実験結果から判断するのか、実験を振り返り、実験操作等に問題はなかったかなど色々考えた上で考察を行うのか。いずれにしても最終的には自分で考えたことを考察に書くことが大切です。その際、ちょっと調べてみたことも参考にして書けるともっと素晴らしいですね。
それでは、次回の生化学実験をお楽しみに!
記事:小嶋文博
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